ミャンマー連邦共和国エヤワディ地域シェタウンヤン地区チャウンター村落群は、エヤワディ地域の最西部に位置しています。
同村落群にあるウド村は川のすぐそばにあり、住居のほとんどは、1mに満たない幅の道を隔てた沼地のような場所に立ち並んでいます。塩の満ち引きの影響で、時間によっては、道が水に浸かってしまいます。一見すると衛生的ではないにしろ、水には困らないようにも見えますが、海に近いということが災いし、川の水は塩分を多く含んでいます。
そのため、飲み水などの生活用水として使うことは出来ません。村でつくった共同の大きな溜め池に雨季の間に雨水を溜め、その水を飲み水や炊事、洗濯などの生活用水全般に利用しています。溜め池は、朝や夕方の涼しい時間帯になると、水を汲むために村人が集まる生活の中心のような場所にもなっています。
雨のほとんど降らなくなる乾季になると、水はどんどん減り続けていきます。涸れかけて濁りの酷くなった水の中には無数のオタマジャクシが泳ぎ、人と一緒に集まってきた犬たちが、その場で水を飲んだり用を足したりしていますが、子どもたちは気にも留めずに、すぐ側で水を汲んでいます。不衛生な水を飲むことで、抵抗力の弱い幼い子供たちが細菌やウイルスによる感染症にかかり、下痢・嘔吐・発熱などで体力を奪われ重症の場合は命を落とすことも少なくありません。しかし、どんなに汚れた水だとしても、この溜め池の水に頼るしかありません。
そんな溜め池も、乾季の終盤に差し掛かる頃には、完全い涸れてしまいます。村では、毎年のように水不足に悩まされ、水を得るために奔走し、本来の仕事を満足にすることができません。時には、なけなしのお金で水を買わざるを得なくなり、生活は苦しくなるばかりです。
隣村のチャウカウン村の近くを流れる川は、海から少し離れているため、塩分は含まれていないのですが、乾季には水量が減り、流れが寸断されてしまいます。あらゆる物質が滞留し、澱んでしまった川の水を口にすることはできません。歩けるほどに干上がった場所を50cmほど掘り、数時間末と水が滲み出てきます。なんとか得た水を生活用水として利用するのですが十分な量ではありません。炊事、洗濯、家畜や畑の水やり等にも事欠き、入浴は二の次。また、雨季には雨量は増えるものの高温多湿の為、感染症が増加する傾向にあり、ウド村と同様苦しい生活が続いています。
この地域では、井戸を掘るにも、浅い井戸では海水の影響を受けてしまうため、深く掘らなければいけないのですが比較的水質の良い水脈の上に、非常に硬い石の層があり、専用の刃でしか掘ることが出来ません。その専用刃は高額な費用が掛かってしまいます。日々の生活にも困窮している村人たちには、費用を捻出することは到底かないません。
生きるために必要不可欠な水を取り巻く環境が深刻な問題となっています。
現地の職員からチャウンター村落群の現状を聞き、掘削専門業者による調査及び必要とされる支援内容の検証を行い、「TOTO水環境基金」へ、同村落群での水環境整備事業(発電機付き大型深井戸・トイレ・水道設備の建設)を応募し採択されました。
2017年4月7日、TOTO東京汐留事業所にて開催された助成団体交流会において、助成決定通知書が正式に授与され、2019年度までの3年継続助成事業として取り組むこととなり、ウド村での工事を開始しました。